岩手大学 人文科学系 主催 2015年度 第1回 公開講演会 のご案内 |
【講演要旨】 豊かで強力な国々(いわゆる「北の先進国」)の視角から見れば、今日アフリカは、政治的、経済的、そして文化的にも、国際的な世界秩序の外側に在って作用しているように見えます。しかし、アフリカが世界規模の資本主義構造や植民地支配的勢力関係のうちにどんなに不均衡に組み込まれようとも、あるいは、アフリカの文化的産物が都会的娯楽産業に対してどんなに周辺的な存在にすぎないと見られようとも、実はアフリカは、地球規模のシステムにとって不可欠な一部なのです。そのような不均衡な統合のルーツは、近世にまで遡ります。ほぼ4世紀にわたって、大西洋の奴隷貿易(そして南北アメリカ大陸とカリブ海において実践された奴隷制)は、アフリカ人を犠牲にして急激な地球規模のアンバランスをもたらしました。発展のためのもろもろの機会はそれ以降妨げられることになり、多くの下劣な人種差別主義的決まり文句がでっちあげられ、アフリカの服従を正当化するために広く使われたのです。1880年代以降に生じ20世紀後半まで続いたヨーロッパ列強による植民地支配は、その不平等な関係をさらに悪化させ、非植民地化が行なわれた次の時代でも、ほんの少ししか、遍在する従属関係から自由になれませんでした。それゆえ、近代の始めから終わりまでずっと、ヨーロッパの人種差別主義、植民地支配、そしてアフリカの富と資源の資本主義的搾取は、西洋人のアフリカへの関与を正当化する一因となったのです。植民地支配が始まったことによって、アフリカの主権は失われました。それ以降、ヨーロッパ人がアフリカを征服し駐留するためのイデオロギー的正当化は、それが義務(「啓蒙する使命」)とみなされることによってあちこちに現れることになりましたし、同様に、外国の支配に異を唱え、侮辱的な覇権主義的考え方を拒絶する主張も、あちこちに現れたのです。アフリカ人たちは、いろいろな手段を用いて絶えず従属関係に抵抗しました。これらの手段には、解放と自由、平等と連帯といった革命的思想を喚起する、したがって独自のイデオロギー的立ち位置から覇権主義的な西洋的言説と渡り合うことになる、すぐれて「現代的」なやり方が含まれていました。19世紀後半以降、最初に人種差別や外国支配の諸問題に批判的に取り組んだのは、西洋的教育を受け汎アフリカ的見地に立ったアフリカ人たちであり、彼らはやがて植民地主義と資本主義についての真っ当な分析を提示するようになりました。今回の講演では、こうした汎アフリカ主義の興味深い歴史の多様な側面を取りあげます。 【講師略歴】 アルノ・ゾンダーエッガー先生は、現在、オーストリアのヴィーン大学アフリカ学研究所の上級講師であり、2011年度から3年間、副所長を、そして2012年度にはドイツのベルリン大学(フンボルト大学ベルリン)の客員教授を務められています。ご専門は、近世以降のアフリカ史(特に西アフリカおよび中央アフリカ)で、主たる研究分野としては、アフリカと世界の他の地域との複雑な関係、世界的文脈におけるアフリカの特別な役割、世界的視野に基づく思想史におけるアフリカの位置といったテーマが挙げられますが、特に、最後のテーマには、知識生産における力の不均衡の問題、人種差別主義と人種差別の問題、帝国主義と植民地支配の問題、世界へのアフリカの関わり方の問題などが含まれます。また、主たる研究業績としては、これまでに、ドイツ語の単著2冊(『人種差別の境界を越えて:ヨーハン・ゴットフリート・ヘルダーのアフリカ観』2002年、『アフリカの悪魔化:専制政治という概念とアフリカの専制政治の歴史について』2008年)や、アフリカの歴史や人種差別に関するドイツ語や英語の共編著数冊(『人種差別:多面的現象』2008年、『民族性と「人種」への展望』2009年、『1500年〜1900年のアフリカ:歴史と社会』2010年、『20世紀のアフリカ:歴史と社会』2011年、『南北・東西の諸関係:地球規模の世界史入門』2015年、『植民地世界と新植民地世界についてのアフリカ的思考:アフリカ思想史の諸相』2015年)等が挙げられます。 |